手術とはどんなことをするのですか・・・開腹手術
急性虫垂炎の手術は患者さまからもよく「簡単な手術ですね」と言われます。確かに癌の手術やたくさんの臓器を摘出する手術に比べると虫垂摘出術で摘出するのは、盲腸から飛び出した直径2cm、8cmほどの長さの虫垂を根本をくくって切って取るだけですので、術後に腸の漏れもなく、血管も一本だけきちんと処理すれば良いので複雑な手術ではありません。ただ、炎症が強いと周囲の腸管との癒着が強く、その周囲の脆くなった腸管に傷をつけたり、膿が溜まっている時に、十分に洗浄できなかったり、といったこともあるので、「単純な手技」ではあるけれど。「簡単」とはいえない、十分に熟練の必要な手術であることは間違いありません。
急性虫垂炎の手術は腹腔鏡下手術が断然有利です.
虫垂切除術は単純な手術ですから小さな傷でできるでしょう?
確かに直径1cmほどの虫垂を取り出す手術ですから、1cmほどの傷で十分だろうと言われますが、引っ張り出すだけで手術が完了するわけはなく、周囲の組織から剥離、血管の処理が必要で、炎症がひどくない場合でも最短2〜3cmの傷は必要です。数年前までは2〜3cmの小切開を自慢する先生もありましたが、切開創が小さいということは虫垂のほかはあまり見ることができないということ、つまり炎症の進んだ例では手術は不可能で、逆に小切開で手術することのできる状態なら手術の必要がないこともあり、また2cmの傷から炎症のある虫垂を出し入れして手術をすると、虫垂表面の細菌が創に付着してしまい、術後の創感染の原因になる恐れもあります
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小さな傷手術をしたいなら腹腔鏡下手術ですればいい。小さな傷口から無理して腹腔内を覗き込まなくても、お臍に1cm傷をつけてカメラを入れてしまえば腹腔内の端から端まで観察し腹膜炎の状態を診断して、広範囲の剥離、洗浄も可能です。さらに5o、3oの傷から鉗子を入れれば小腸を裏返し、虫垂だけでなく盲腸全部、大腸全部だって切除できる。膿だらけの虫垂でも腹腔内で袋に入れて取り出すので創に触れることもないので創感染もない、急性虫垂炎の開腹手術は腹腔鏡下手術に勝るものはありません。
術後の経過は虫垂炎の程度によって異なります。比較的炎症が軽い場合には術後翌日から水分を飲み、ガスが出れば食事を開始します。退院は手術後2〜4日で可能です。
緊急手術は危険なのですか
緊急手術と待機手術の最大の違いは、緊急手術では疾患の診断が完全に付かない場合があるのみならず、患者さんの全身状態も完全には把握しきれないまま手術に臨まなければならないことです。従って麻酔に対する危険性、手術中の管理、術後合併症などの面で、予測できないことが起こる可能性は通常の待期的手術より大きいと言わざるを得ません。
通常の手術の場合には、患者さんが手術に耐えられるかどうか、例えば心臓や肺や肝臓や腎臓に病気があるか、対応法など検査、検討が可能です。しかし、緊急手術の場合これらの検査は不十分なままで手術を行わざるを得ませんので、手術中または手術後にそれらの障害が起きる可能性は通常の手術より高くなります。