手術のタイミングを見極める・・・これが外科医の腕の見せ所

 「手術をするのですか?」私たちが患者様のお腹を触って「虫垂炎ですよ」というと,必ずこう聞かれます。急性虫垂炎には「ちらす」事が出来る状態と「早々に緊急手術を行わなければならない」状態があるのですから、これらを区別するのが外科医の仕事、30年前外科医になったばかりの私に上司は「虫垂炎と診断したのなら手術しなさい」と教えてくれました.でも腹膜刺激症状(腹膜炎の合併を示す腹部の所見)がなければ,血液中の白血球数が12000/μl以下なら(正常値は35009500)抗生物質で治療可能かと思えるようになりましたが、それでも手術してみて「抗生物質でいけたなあ」と思うことや、逆に「ちらした」つもりでも数日後に腹膜炎がひどくなり「手術が遅れた」と思うこともありました.

でもこの15年くらいは腹部超音波検査,CTスキャン検査で虫垂の腫れ具合,腹腔内膿の存在,他の病気の否定などが診断できるようになり、非常によく効く抗生物質が登場したりで「ちらす」事が増えてきているのです。

急性虫垂炎は長年手術の必要な疾患の代表のように言われてきましたが,最近の器械の発達や,診断技術の進歩により、必要なら早期手術,不必要な手術は避けるという判断の精度が向上しているのでご安心ください。