急性虫垂炎に対する腹腔鏡下手術
2.急性虫垂炎の手術は腹腔鏡下手術が断然有利です.
虫垂切除術は単純な手術ですから小さな傷でできるでしょう?
確かに直径1cmほどの虫垂を取り出す手術ですから、1cmほどの傷で十分だろうと言われますが、引っ張り出すだけで手術が完了するわけはなく、周囲の組織から剥離、血管の処理が必要で、炎症がひどくない場合でも最短2〜3cmの傷は必要です。数年前までは2〜3cmの小切開を自慢する先生もありましたが、切開創が小さいということは虫垂のほかはあまり見ることができないということ、つまり炎症の進んだ例では手術は不可能で、逆に小切開で手術することのできる状態なら手術の必要がないこともあり、また2cmの傷から炎症のある虫垂を出し入れして手術をすると、虫垂表面の細菌が創に付着してしまい、術後の創感染の原因になる恐れもあります。
小さな傷手術をしたいなら腹腔鏡下手術ですればいい。小さな傷口から無理して腹腔内を覗き込まなくても、お臍に1cm傷をつけてカメラを入れてしまえば腹腔内の端から端まで観察し腹膜炎の状態を診断して、広範囲の剥離、洗浄も可能です。さらに5o、3oの傷から鉗子を入れれば小腸を裏返し、虫垂だけでなく盲腸全部、大腸全部だって切除できる。膿だらけの虫垂でも腹腔内で袋に入れて取り出すので創に触れることもないので創感染もない、急性虫垂炎の開腹手術は腹腔鏡下手術に勝るものはありません。
術後の経過は虫垂炎の程度によって異なります。比較的炎症が軽い場合には術後翌日から水分を飲み、ガスが出れば食事を開始します。退院は手術後2〜4日で可能です。
また緊急手術に対しても虫垂だけしか見れない開腹手術に比べて腹腔鏡下手術は腹腔内全体を観察することができるので,術前の診断がしにくい患者様でも,しっかり診断,手術ができるのです.