腹腔鏡下手術
市原部長は神戸大学第一外科(現:食道胃腸外科)で学位取得後,1998年から2005年まで神戸大学食道胃腸外科で,本邦でも黎明期であった頃より食道癌,胃癌,大腸癌の腹腔鏡下手術を立ち上げ,神戸大学附属病院の光学医療診療部で多数の症例の執刀を担当してきました.
その後西宮市立中央病院消化器センター部長,尼崎中央病院外科部長,消化器病センター長として多数の腹腔鏡下手術を執刀.この手術の優越性を内外の学会,シンポジウムなどで講演,多数の論文で良好な手術成績を報告してきました.
腹腔鏡下手術の教科書として金原出版から2006年に「新しい腹腔鏡下手術手技」という著書にまとめま出版.さらに患者さまに御自身の病気をわかりやすく理解して頂くためのテキストとして,2010から2013年の間に同出版社から「インホームドコンセント 患者の知りたい」シリーズとして3巻が「胆石症」「胃癌」「大腸癌」が刊行されています.
当科ではこのような「患者様にやさしい手術」である腹腔鏡下手術を,手術が難しい,高度技術が必要であるとして通常手術とせずに「開腹手術のオプション」としてたら得るのではなく消化器手術の第一選択として「可能であれば腹鏡下手術を」と考えてゆきます.
患者様はそのことをよくご存じで,「腹腔鏡下手術をこの病院で」と指定してこられる方たちが大半である事も事実です.
1.当科で行っている腹腔鏡下手術の対象疾患は
以下の通りです
a)消化器外科疾患
これら疾患に対して90%以4.当科で行っている腹腔鏡下手術は以下の疾患です
上は腹腔鏡下手術で対応しております
@悪性腫瘍:
食道癌,胃癌,大腸癌,肝臓癌
A炎症性腸疾患;
潰瘍性大腸炎,クローン病など炎症性腸疾患
B胆道良性疾患:
胆嚢結石,総胆管結石,
C急性炎症:
急性虫垂炎,急性腹膜炎,
D腸閉塞
c)一般外科4.当科で行っている腹腔鏡下手術は以下の疾患です
@ヘルニア
鼠径ヘルニア,臍ヘルニア,腹壁瘢痕ヘルニア
「小さな傷からカメラを入れて手術する」と言えば,単に「傷の残らない」「美容的」メリットの手術と思っておられる先生方が多いかと思いますが,「傷が小さい」事は意外と意味深いものがあります.我々は「低侵襲」と説明してきましたが,そもそも「侵襲」という言葉自体が意味不明で,本当に低侵襲である事を示すデーターも少なく,ベテラン外科医の方々に対する説得力がないのも無理ありません.しかし腹腔鏡下手術を経験した外科医はみな「何故だか患者が術後元気だ」という印象を持っていることも事実です.
なぜ元気なのか,原因は「傷が小さいから」です.傷が小さいから創痛が少ない,腹壁筋の損傷が少ないから体動時の苦痛が少ない,そのため早期離床,呼吸,喀痰排出が楽,だから呼吸器合併症が減少,食事摂取開始が早く栄養障害が起こらない.加えて腹膜損傷面積が少いから術後の腸管癒着が少なく癒着性腸閉塞が稀.すなわち術後合併症の減少につながるのです.術中の臓器移動が少ないことも特徴です.開腹手術では視野確保のために腹腔内の小腸,大腸,大網などを一度腹腔外に出し,肝臓,膵臓などはかなりの圧で圧排することもあり,術後肝酵素,アミラーゼの上昇をすることもありますが,腹腔鏡下手術では見たい場所にカメラが移動するため,臓器はの移動は必要最小限,またリンパ節郭清など微細な手技では腹腔鏡による拡大視での手術となり精密な操作に有利で,開腹手術に比べて正確な手術が可能かもしれません.私自身の長期予後では大腸癌1000例弱の腹腔鏡下切除術のうち,最も手術の精度による影響が大きいとされているstageIIIaのかたの術後3年無再発生存率は約85%と大腸癌研究会の開腹手術の5年生存率70%に比べ好成績(再発しても2年は生存されるだろうとの予測)で,腹腔鏡下でのリンパ節郭清手技が開腹に劣るものではないことを示しております(図3).
これまで開腹で行われてきた手術を,腹腔鏡下で行うことについては専門医師たちの間でも未だに不安や,懸念があることは事実です.
胃癌,大腸癌ガイドラインでは腹腔鏡下手術は(リンパ節郭清の不要な)早期癌に限る手技とされ,進行癌には不適当とされています.
しかし,この手術も始まってから長年が経過し,患者さんの苦痛の軽減は明らかに良好であることが証明され,手術手技の工夫や術者の熟練により,腹腔鏡下手術の良さが実証され始め,今では当科の他,東大,京大,阪大他の有名大病院でも進行癌も適応とされはじめ,現在,大規模な成績調査が行われています.
もう一つの心配は術中大血管損傷時の対応です.「開腹移行の間に出血多量で・・・.」という夢は私も何度も見ましたが,実際には起きるものではないということが分かってきました.
当科ではこうした事故はテレビで操作するという視野の悪さが,原因と考え,様々な工夫をしてきました.
これまで,他の施設では15型の通常テレビ画面を見ながら手術していたものを,47型のハイビジョンテレビで操作できるようにシステムの改良を行いました.
47型のモニターだと手元の直径5mmの鉗子が10cm程に拡大して見えます,手術時「有名血管(重要な血管:誤って切ると大量の出血する)」として処理する血管は平均2mm程ですから,5cm程に見えます,また大出血が恐ろしい1cm前後の大血管は20cmになりますので,これを10cmの鉗子で損傷することはありえません.
故意でなて損傷するものではないといえるかもしれません,実際の腹腔鏡下大腸癌手術の出血量は平均100ml以下と.開腹手術の3から5分の1程です.この数字だけでも安全性を示すと言えるのではないでしょうか.
胆嚢摘出術と同様に多くの消化器外科手術が腹腔鏡下手術が標準的となってゆく日も近いはずです.当科では腹腔鏡下手術の術者を指導する資格,日本内視鏡外科学会が制定した技術認定医が二名常勤し,後進の指導に当たっております.当科の腹腔鏡下手術を医師会の先生方に御理解頂きますようお願いしますとともに,将来の消化器外科医を目指しておられる御子息,御後輩がおられましたら,一度当科にお声かけをしていただければと思っております.
当院では日本内視鏡外科学会の技術認定医が,安全かつ最も最新の手術を実施します。早期だけでなく進行した全ての大腸癌、胃癌の患者様、急性、慢性胆嚢炎、総胆管結石を合併した胆石症の患者様、急性虫垂炎、鼠径ヘルニアの患者様も信頼のおける医師による確実な腹腔鏡下手術を受けていただけます。 医学発展の恩恵を実感してください。腹腔鏡下手術は合併症の心配も少なく、通常約1〜2週間程度で退院が可能です。
もちろん個々の患者様の病状により腹腔鏡下手術が不可能な事もあり完全に全患者様が対象となるとは言えませんが,さらに適応を広げることができるよう,学術知識を求め,修練を重ねることが必須です.そのために日本内視鏡外科学会では腹腔鏡手術の指導者として学術実績,学会発表の多少ではなく,もっぱら手術手技を厳格な審査人により合否を決定して技術認定医を指定しており市原部長もこの制度発足第一期合格者です.
5.最新の画像診断器機を使用した手術です
最高の眼を持っています。
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