3.胆石の治療が必要な患者様とはどんな方でしょうか

 同じ胆石症でも,症状のある方,無い方がおられます.
ご自身は治療が必要なのか,手術を受けた方がよいのか,必要ないのか,お悩みの方が多いと思います.
このページではその判断基準を示します.


a)胆石症に対する治療は必要か否か



 胆石が原因での症状(上腹部痛,発熱,黄疸)のある方,これまで何回か発作のご経験のある方には,治療を開始されるべきです.
特に,度々腹痛発作を繰り返す方や,これまでに胆嚢炎と指摘されたことのある方には手術を念頭に置いた治療をお勧めします.


b)症状の無い方は治療は必要でしょうか.


 昔は健康診断が今ほど一般化していませんでしたから,症状の無い方で胆石が見つかることは,珍しかったのです.
また現在でも毎年人間ドックを受けておられる方でも,血液検査だけで済ませてしまい,腹部超音波検査の経験がない方は,胆石症が指摘される可能性はほとんどありません.超音波検査も含めたドックを受けたり,他の病気で超音波を受けられた時に,偶然「胆石があります」と指摘された方が,ここに当てはまります.

 @まず本当に症状の無い患者様(無症候性胆石)なのかどうか確認しましょう


 症状の無い胆石について,無症候性胆石と言う呼び方をしています.
このような方は実際多いのです.
ただ「症状がない」と言っても,患者様は「胆石症の痛み」がどんなものか,ご存知の方は少ないのでは?

お腹が痛むので病院で検査されたところ,腹痛の原因が胆石と診断され,
これが胆石の痛みか}と理解されえている方だけが,知っておられるのが胆石の痛み.

腹痛で来院され,胆石症と診断される患者様のほとんどは「胃が痛い」または,「胃の辺りの上腹部痛」と言われて受診されます,
ご自分で「いつもの胃痙攣です」とか「胃カタル」と主張される方も多いのです.
しかしそんな病名で心窩部から右季肋部当たりの痛みが出るなんてことはありません.胃カメラ検査で胃炎,胃潰瘍が証明されていないのであれば胆石症を疑うべきでしょう.

つまり,ご自分で症状がない(=無症候性)と思っておられる方の中には,胆石発作を繰り返しておられるけれども,「胃けいれんはあるけど胆石はない」と思っておられる方が多いのです.
本当に無症候性胆石かどうかはよく調べてみないとわからないということなのです.


 A症状の無い患者様(無症候性胆石)の治療


 胆石症と診断される方でも,まったく症状の無い方(無症候性胆石症)もおられます.

そのような方は,治療を行わずに経過観察でも良いでしょうし,胆石溶解剤を飲む(内科治療)も考えてもいいと思います.「胆石の合併症」のところで「胆石症の方は胆嚢癌になりやすい」と書きましたが,痛みのない方に限れば胆嚢癌になる可能性は低く,胆石の無い方と同程度の頻度との報告もあり,癌については気にする必要はないと思われます.
ただ,将来に胆嚢炎,胆管炎,膵炎が起こる可能性については不安要因です.
いつ,どこで発症するかわからないという不安は残ります.


 B結石が小さいからまだ大丈夫?


 またこれら合併症の発生頻度は結石の大きさが大きくなっておこるものではありませんから,「まだ小さいから大丈夫」ということはありません.
小さな結石であっても合併症の頻度は同じですから,やはり治療はした方がよいということになります.

一方で胆石の手術は従来の開腹手術とちがって腹腔鏡下手術が普及してきましたので,以前に比べると手術による負担,合併症は非常に少なくなっています.
また胆石の手術は胆嚢炎などの合併症を繰り返せば繰り返すほど,手術が難しくなって,術後の合併症が起こる確率も増加しますので,手術をするならひどくならないうちに受けられる方がよいと思います,


もちろん原因は胃の痛みかが原因ということはありますので,胃カメラなど胃の検査をされて痛みの原因が胃になくて,超音波検査で胆石があるのであれば,その痛みの原因は胆石です.そんな発作が時々出る患者様は,やはり手術をお勧めします.
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