a)腹壁の仕組み
おなかの中の胃や腸などの臓器は直接皮膚の下に入っているのではありません.
腹膜と言う薄い膜の中に詰め込まれているのです(ビニールの袋に臓器が入っているよう).
そして皮膚と柔らかい腹膜の間に,筋肉の束(腹筋,腹直筋など)があり,外から打たれても臓器が傷つかないように何種類もの筋肉が組み重なりあい,よろいを作って内臓を守っています.
年齢とともに腹部の筋肉は細く,弱くなってきます,筋肉の束の間の隙間が広がりってしまいますが,肥満,便秘などでお腹の中身が増えるとそうした隙間に強い腹圧が加わりお腹の中身,臓器が飛び出してしまいます.この状態を「ヘルニア」と呼んでいます.お腹にはもともとそうした弱い部分が何箇所かあり,その一つが鼠径部です.
飛び出してくる中身が小腸である場合が多く,問題になるので「脱腸」と呼びならわしています.
C)ヘルニアの症状の特徴
横になっているとどうもないのだけれど,立つと鼠径部にゴルフボールのような突出が出てくる(脱出する).でも,横になると自然に引っ込む.
出た時には,押してみたりして自分で引っ込める(返納して)おられる方が大半で,一日中脱出しっぱなしという人はp多くはありません.
脱出,もどるを繰り返し,ある時,腸が脱出したままもどらなくなり(嵌頓),腸の中を便が通らなくなり,腹痛,嘔吐,腸閉塞の状態になることがあります.
こんな時でも,ご自分で返納を試みる方がおられんますが,これは危険な状況です(下の図をご覧ください).無理をせずに救急車で.外科専門医のいる病院を受診して4ください.
脱出を繰り返すのは筋肉の隙間に腹膜で内張りされたトンネル(ヘルニア嚢)が形成され,これが「道」となって,その中を臓器が出入りを繰り返すのです.